最近、社長業界でお騒がせ度が高いのは、ZOZOの前澤さんと、LIXILの潮田さんでしょう。ついでに、カルビー社長だった松本晃さんの動きも不可解でした。
潮田さんは、家業の建具屋さんを近代的なアルミサッシメーカー「トーヨーサッシ」へと大転換させた中興の祖・潮田健次郎氏の長男です。
プロ経営者招聘ブームに乗って、『日経ビジネス』誌上で「経営教室」を連載するような有名経営者を、連続的にスカウトしてきました。
最初が藤森義明さんです。あのGEの本社で上級幹部になったという国際派です。三顧の礼で迎えながら4年で解任して、今度はモノタロウ創業者の瀬戸欣也氏に乗り換えます。
その瀬戸さんも2年で解任されました。
LIXILの上位株主名簿が同社の開示資料に掲載されていますが、潮田さんの持株比率は僅か3.09%しかありません。
それでも、キングメーカーぶりというか、無茶ぶりを続けています。迷走する巨艦を操舵できない似非オーナーのご乱心が続いています。
迷惑なのは、社員や取引先です。
それにも増して、創業者・潮田健次郎氏の人格や見識を信じてグループ入りを決断した、他社の関係者は、たまったものではありません。
中でもINAXは、衛生陶器ではTOTOに次ぐ市場シェアを誇る優良企業で、LIXILグループ入りする前は、森村グループに属していました。
現在のLIXILにも、伊奈啓一郎さんというINAX(旧・伊奈製陶)の創業家出身者が取締役に名を連ねています。その伊奈取締役が、日経新聞の取材に対して「潮田は嘘をついている」というのですから、尋常ならざる事態です。
森村グループは、三井・住友・三菱などの大財閥に比べればあまり有名ではありませんが、戦前には銀行を経営していたこともある財閥でした。現在でも、世界最大のセラミック企業集団といわれています。
そのような由緒正しいファミリービジネスのファミリーネームを頂く人物が、公然と反旗を翻すのですから、潮田氏の人望の無さが満天に知れ渡ってしまいました。
潮田氏は、古今東西の歌舞音曲に造詣が深い趣味人という触れ込みで、シンガポールに移住しています。
今後は、LIXILの本社をシンガポールに移転したいとも漏らしていたのを、瀬戸氏が国内売上が大半を占めている企業の本社を海外にする理由がないと難色を示したとも伝えられています。
ビジネスの観点からしても、誠に瀬戸氏のほうに分があると思いますが、そもそもシンガポール移住という部分がひっかかります。
私の知人でシンガポールに移住した人は何人もいます。
その全員が節税目的です。
中でも、機関投資家出身者が多いようです。
節税してはいかんとは申しませんが、ハゲタカ投資家ではなく、少なくとも真っ当な商売人であれば、故国に生を受け、故国のいろんな方々の世話になって築いた財は、故国に納税するというのが矜持だと思います。
これには考え方がそれぞれあると思いますから、どっちが正しいとか間違いとか、そういう議論をするつもりはありません。だから矜持という用語を持ち出したわけです。好き嫌いの領域は議論には向きません。
伊奈製陶ほどの優良企業がLIXILグループ入りしたのも、潮田健次郎氏に共感したからでしょうけれど、その長男がこんな端茶目茶な挙動を連発するのでは、伊奈家の人々は勿論のこと、泉下の健次郎氏もお嘆きがやまないこととお察しします。