本欄で指摘していたとおり、日本郵政が豪州の物流企業トール社の買収に大失敗して、投じた6千億円がパーになったと今朝の日経が報じています。
オーナー経営者は公私混同するから前近代的で、先進的な企業は所有と経営を分離しなくてはならないーーというのが現代日本における支配的な思い込みです。
しかし、オーナー経営者であれば、仮に会社のカネを無駄に使ったら、その企業価値が減少して損するのは会社のオーナーである自分自身です。
そこには、自動的に自制が働くガバナンスがビルトインされているといえます。
日本郵政は現在のところ国が約6割の株式を保有していますが、この買収が発生した2016年3月期営業年度においては、80.49%でした。(同社有価証券報告書、2016年3月期、103ページに上位株主名簿)
同じ有報の108ページから役員名簿があり、所有株式数が書いてあります。当時の代表執行役の長門さん(興銀OB)は僅か100株でお茶を濁しているように、総じて自己で経営に当たる企業の株式の所有数は低調です。
鈴木副社長(郵政省出身)の2600株というのが唯一異彩を放っていたとはいえ、総発行株数450万株ですから、これとて僅か0.06%でしかありません。(6%ではなくて、0.06%です)
これでは、何をやっても自分の懐が痛む心配はありませんから、国家財産を簡単に6千億円もつぎ込んだうえに、たった数年後に「ごめんちゃい」しても平気の平左であります。
これは金額も大きいし、日本郵政ということで目立っていますけれど、これに似たことは日本中の上場企業で普通に発生していることです。
サラリーマン経営者による会社公金の無駄遣いです。飲み食いに使うのだけが責められますが、無知蒙昧による趣味のM&Aに投じられ、結局ドブに捨てた公金のほうが事態は深刻です。
その点、経営者が株式の大半を所有しているファミリー企業においては、すべては一族の懐の痛みになって帰って来るブーメランですから、関西電力のような公営企業の経営陣が私腹を肥やしていた如き馬鹿げたこと自体が起こりにくいし、仮に起こっても自己責任で他人様にご迷惑はかかりにくい構造となっています。
上:毎年花見をしている桜の樹です。今年は残念ながら、歩いて愛でるだけでした。
左:見事な花筏(はないかだ)に、じ~んと来ました。
(浄土宗・本誓寺 山門前)