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團十郎襲名披露にみるファミリービジネスの事業継承

歌舞伎界の大名跡・市川團十郎の襲名披露公演が、東京の歌舞伎座で行われています。

 

さすが当代随一の人気役者・海老蔵です。團十郎への襲名披露公演が11月、12月の2か月間にわたり、昼夜それぞれ行われています。

 

チケットは、発売開始日に秒殺が予想されていましたので、松竹のチケット会員として過去に敗退した経験を踏まえて、前日から予行演習して臨みました。

 

案の定、発売開始時刻の午前10時まえから回線がつながらなくなって、やっとつながった頃には全日程で完売となっている状況でした。

 

それを見越して、別デバイスで別回線経由でもアクセスを試みており、そちらのほうはつながってくれたので、プラチナ(?)チケットを入手できました。

 

当日は好天に恵まれ、劇場前では多数の観劇客と通行人によって、写真のような人だかりができていました。

 

実物を見ようという群衆ではなく、貼り出してある写真に対して「押すな、押すな」の人だかりができるというのも、人気商売としては成功しています。

 

今回の襲名披露は、海老蔵の13代目・團十郎襲名と、その実子である堀越勸玄の8代目・市川新之助襲名のダブル襲名です。

家業の事業継承がつつがなくなされていることは、誠にご同慶の至りです。

 

本公演で「新之助初舞台」として表示されていた演目は、歌舞伎十八番の内「外郎売」でした。

子役時代にも外郎売は本公演で勤めていたので、歌舞伎役者としての初舞台ということです。

 

お客さんは老若男女まったく混成ですが、「若い男性」は極めて少数派で、どちらかというと女性優位の観客席というのは歌舞伎では毎度のことです。

 

しかし、海老蔵の公演の際には、女性客の気合の入れ方が全く違うことが、傍観者にもひしひしと伝わってきます。

とにかく皆さん、開演前から目がトロリ~んとなっています。

 

これは何も当代に始まったことではなく、代々の海老蔵、つまり團十郎のときにはこんな調子だったようです。

 

こちらの写真は、今回襲名した13代目のお父さんにあたる12代目・團十郎です。

 

ちょうど10年前に行われた歌舞伎公演のプログラムが手許にあったので、それを写しました。

当時は、いまの歌舞伎座が新築工事中で、新橋演舞場で開催されました。

 

演目は今回の襲名披露公演と同じ「勧進帳」で、弁慶と富樫を、12代目・團十郎と、8代目・松本幸四郎(現在の白鸚)が昼夜入れ替って勤めていました。

 

役者さんの演技や芸風などについては、素人が余計なコメントを発するのは慎みますが、こうしてお家の名と芸が次世代に引き継がれていくことに、観客席から深い感動を覚えました。

 

8代目・新之助の舞台では、多くの観客が我を忘れて没入していることが、彼ら(大半は女性客)の前のめりの観劇姿勢や、喜劇の内容と無関係にすすり泣く声の多さに現れていました。

 

このように、観客つまり顧客に与える感動の源泉は、敢えて単純化してしまえば、血統ということになります。

 

新之助が團十郎の子ではなく、オーディションで選ばれた一般の子役だったとしたら、ここまで客席を嗚咽の海にすることはなかったでしょう。

 

これは伝統芸能だけに該当することではありません。

 

取ってつけたようなガバナンス論を振りかざして、父から子への事業継承に難癖をつける評論家と、感情が購買に直結する顧客と、どちらの声を聴くべきか事業主には自明です。

 

ファミリービジネスが血統によって継承されていくことに対して、顧客が感涙にむせんでいる現場からの目撃談として申しました。