Q13

家業のM&Aで、事業法人Aは譲り渡し側に残し、事業法人A’を設立して、譲り受け側に譲渡することに疑問が残っています。

何のために譲り渡し側に残した方がいいのでしょうか。

譲り受け側から見ると、事業法人Aをそのまま譲り受けるのではなく、新たに設立された事業法人A'に事業を移転して譲渡されることには、いくつかの疑問が生じます。

「なぜ既存の事業法人Aをそのまま譲渡せずに、新設法人A’を設立して事業を分割する必要があるのか?」

「もし、事業法人Aが抱えている負債や法的リスクがあるならば、それを隠そうとしているのではないか?」

「新設法人A’が持つ事業に問題がなくても、移転時に何らかの情報や資産が正しく引き継がれていない可能性はないのか?」

「また、法人Aに残された資産や負債がどのように扱われるのか、透明性が十分確保されているのか?」

譲り受け側としては、こうした不審点がクリアにされない限り、譲渡のスキームに対して疑問を感じ、不安を抱く可能性が高いと思うのですが。

 

A13

これは「第2会社方式」と呼ばれているスキームであり、世界中のM&Aで幅広く用いられてきた古典的な手法で、なんら特別なものではありません。

日本国有鉄道の民営化のときに、JR各社と、「国鉄清算事業団」に二分された例もこれに含まれます。

買い手は全部調べて分離に納得するので、不安や疑問はありません。

全部を一体にして譲渡すると、買い手は不要なものも引き受けなければならず、それがたとえば毀損したBSであれば、M&Aそのものをできなくなってしまいます。

完全一体でのM&Aのほうが、調べきれないリスク、隠匿されるリスクが高まり、DD費用が分離型よりも高額になります。

また、「買い手が不要で売り手が必要なもの」があれば、譲るものと残すものに分離することは双方にメリットとなります。

以上の点から、ファミリー企業のM&Aに用いる手法として、諸条件が合えば推奨できます。