Q  私の両親は、都内の近隣商店街で小さな小売の店を営んでいます。

年齢は70代の後半で、体はまだそれなりに元気ですが、本人たちはそろそろ店を閉めようかと

考えていたようです。

私自身は長男ではありますが、最初からその店を継ぐことは考えておらず、また両親も私に

継いで欲しいとは表だって言ったことはなかったので、大学を卒業したらそのまま就職して、

20年近く経っています。

私の勤務先は一流企業というわけでもありませんが、一応それなりの会社で、自分も家族を持って

生活していることもあり、両親が店を閉めることは本人が決めることなので、

それに対して賛成も反対も特にはありません。

私の家は両親とは離れているので、実家の商売についてつぶさに見たりしているわけではありません。

ところが、久しぶりに実家を訪れたら、父が店の権利を見ず知らずの人に売却すると言い出したので、

予想もしていなかったことでびっくりしました。

実家の住まいと店舗は別々なので、店舗を手放しても生活する場所がなくなる訳ではないのですが、

どうやら飛込みでやってきた業者の言うがままに契約してしまったようなのです。

そんなことで何か損害が出ては困るので、どうしたら良いでしょうか?

 

A  ご両親が堅実経営をされてきたお蔭で、ご商売に多額の借金がないことが、逆に売買業者に

目をつけられたということです。

多額の借金があると、売るにも売れない状況になるので、業者もあまり手を出したがりません。

逆に、キレイな決算状況のご商売であれば、規模の大小を問わず、仲介業者が扱いたがる傾向にあります。

本件について、父上はどなたかにご相談されたのでしょうか。

たとえば、事業を営む上では、税理士や社会保険労務士などの外部の専門の先生が顧問として

官公庁への提出書類の作成や、日常的な各種アドバイスをされてきたと思われます。

経営者の方が永年にわたって信頼してきた先生であれば、そのお店のことや事業の経営状況も

よくご存知ですから、このような大きな決断をする際には、そのような永年のご指導をお願いしてきた

顧問の先生に相談するのが、まず最初にできることとしてはお奨めします。

仲介業者は、なるべく早期に、誰にも邪魔されずに契約成立・引渡完了まで持って行きたい

のが人情なので、顧問の先生が登場することを歓迎しない業者も散見されます。

しかし、父上のご意向ということで明確に伝えれば、無視できないはずです。

そこで、父上にそのような先生がおられるのかを確認し、もしおられるのでしたら、

その先生が同席して、仲介業者もしくは買い手側の代表者と面談していただくことを

されてはいかがでしょうか。

 

【顚末】

この回答を受けて、相談者は父上に聞いたところ、永年指導を受けてきた顧問税理士が

判明した。ところが、その先生は事前に本件権利譲渡を聞いていなかったので驚き、早速仲介業者に

連絡したところ、仲介業者は矢面に立つことを拒み、買い手側が対応するように求めたため、

税理士から買い手側へ連絡を入れることとなった。

後日、父上、税理士、買い手側代表者の3者面談が税理士事務所で行われた。

ここで父上と年齢的にも近い、経験豊富な顧問税理士が買い手側の代表者の品定めを行い、

条件面でも問題がないという確認が取れたので、手続を進行することとなった。