Q2 引退した夫のことでご相談します。ある日、夫名義の普通預金の残高が急に数千万円減って
いることがわかり、びっくりしました。
夫に聞いても、要領を得た返事がありませんでした。よくよく聞いてみると、どうやら
いつも行く○○銀行で引き落とされたようですが、何せ金額が多額なので私としては納得できません。
(注:原文には大手メガバンクの実名が記載されていましたが、ここでは匿名にしておきます)
このお金は、夫が長年経営していた会社を譲った対価でしたので、大変貴重なお金です。
それが、数日の間に2回にわたって数千万円ずつ引き落とされるというのは、理解できません。
その銀行に聞いても、「ご本人様ですか?」と言われ、「妻です」と答えると、それ以降は
相手をしてくれなくなるので、何が起こったのかわかりません。
夫は、自分がしたことについて文句を言われていると思うらしく、私が聞いてもこのことについては
詳しいことを話さなくなりました。
そういえば、そのころ銀行の人が何回か自宅に来られたことがあり、私もお茶を出した記憶があります。
そこで、何か資料があるかもしれないと思い、客間のテーブルを見たところ、いろいろな名刺や資料が
出て来ました。
銀行の人も、自宅近所の支店の方だけでなく、以前、夫が現役時代に取引していた都心部の支店の
担当者の方も複数見えたようです。(注:これも原文では実際の支店名が記載されていました)
それだけではなく、外資系の証券会社や、よく聞いたこともない保険会社の名刺も何枚か出て来ました。
資料は、難しいことがいろいろ書いてあって、また、分厚いものが何種類もあり、私が見たところで
内容を理解するのは無理だと思い、そのままにしてあります。
夫には余裕のある資金があるわけではなく、今後の生活費にするはずの大金が、信頼していた銀行の
普通預金から突然消えてしまったのは、どうしても納得できません。
これを取り戻すにはどうしたら良いでしょうか?
A2 個人情報保護法の施行以降、銀行に限らず金融機関は本人以外の者へ取引内容を開示することはしていません。同居のご家族であっても、「本人以外の人」がいくら聞こうとしても応じてくれません。そのような規定になっているので、ご事情はお察ししますが、いくら食い下がっても同じことです。
ご自宅から証券会社や保険会社の名刺が出てきたという状況証拠から推測しますと、当該都市銀行の提携している証券会社や保険会社が発売している高額の金融商品を購入された(させられた?)可能性もあると思われますが、メールの情報だけでは何とも断定できません。
できることは、ご主人と同行のうえ、ご自宅近くのその支店を訪問されることです。その場で、ご主人から奥様に対して「自分の取引内容を開示して構わない」という同意を銀行員の前でしていただくことです。捺印を求められることもあるかも知れませんので、通帳と銀行印を持参されたほうが2度手間にならないと思います。
そのうえで、取引の具体的な経緯と内容という、事実を聞き出すことが先決となります。
なお、当サイトは銀行にとってはまったくの部外者であり、弁護士のように国家資格もありませんから、相談者と銀行の間に入って交渉や質問などをすることは残念ながらできません。
できることは、自衛手段を講じておくことです。
銀行だからといって安心はできません。普通預金は狙われます。なにしろ、通常の物販業者は、ターゲットとした潜在客がどれくらいの現金を持っているのかはわかりませんが、銀行の場合には自社の端末で1円単位まで正確に、リアルタイムで掌握しているのです。
「この客は、いくら持っている」「どうやら毎月生活費で使う金額はこれくらいだから、○百万円は余剰資金だろう」ということが容易にわかってしまいます。
銀行によっては、そのような動きの鈍い口座に多額の預金が置いてある顧客の担当者には、アラームが鳴って、提案に行くように催促するような仕組になっているところもあります。
通帳と判子を親族が預かるのが確実です。しかし、高齢者によってはこれを嫌がるケースもあり、簡単ではありません。そのような際には、通帳と印鑑を変えて別の定期預金を新しく作り、その通帳と印鑑を預かるようにすると、本人の抵抗が薄れてうまくいくこともあります。
いまでは、事業継承案件に限定されたことではなく、高齢者がさまざまな産業のターゲットになっています。
健康食品や健康器具の通信販売などは、その典型です。自主的に判断できる人だけではなく、既に適切な判断ができないような方々であっても、販売対象となっています。介護の現場では、「断っても送って来る」通販が問題になっています。
生命保険も強引な販売が目立ち、高齢者が被害に遭っている、と最近の毎日新聞(2017年9月12日)が報道しています。【毎日新聞公式サイト 生保契約トラブル 無理な勧誘、高齢者に続発】