Q 私は、東京の都心で時代遅れの事業を営む家に生まれました。

その事業とは○○○○(編集註:特定を避けるため伏字にしてあります)です。

利用者は殆どいない状態ですが、土地・建物は自家所有で償却済、固定資産税も減免され、

運営には人手もかからず、さらに公的な補助金も出るので、親の老後の趣味のような位置づけで

やってきましたが、年齢的、体力的に限界に近いので、もう閉店しようと考えています。

そうなると、事業としては終了となります。自分は外部の会社勤めをしていて、生活には困りませんが、

せっかく何代か続けてきた商売を閉じてしまうのも残念な気がしています。

 

A

 このサイトでは、「やめたい」「閉鎖したい」「譲ってしまいたい」という事業主や後継者の方には、極力、事業を継続する方向で新たな視点を提供し、ご本人が自ら自信とやる気を持って新世代の担い手として取り組んでいかれるようにアドバイスさせて頂いています。

 しかし、本件については、その事業自体が社会的な役割をほぼ終えていることは明らかであり、交通至便の都心で広大な敷地を使って昔からの事業を継続することは、これまでの家業の歴史を踏まえても、合理性があるとは言い切れません。そこで、この用地については再開発を行い、時代の趨勢に合った事業によって次世代の収益を得て行くことが望ましいと考えます。

 この際に注意して頂きたいのは、単に廃業をして、残った土地を分割して家族で分けてしまったり、外部へ売却して売却益を得て終わり、という形式は(放っておくとそのような方式を奨めてくる業者が多く現れると思いますが)、避けるべきだということです。

 つまり、廃業ではなく、あくまでも事業内容の転換なのです。零細企業とはいえ法人格を有して永年事業を継続してこられた実績を消滅させてしまうのではなく、その法人格をそのまま活かして新事業に展開されることを推奨します。

 これによって、あなたのファミリーの家業は、時代の要請に応えて事業形態を変えつつ、社会の役に立つ便益を供給し続け、営業の実態も子孫へ語り継ぐストーリーも、過去と未来が一筋に繋がっていくのです。