公的機関なら信頼できるのではないか?

 

 

経済産業省・中小企業庁の政策として、全国47都道府県の商工会議所などに開設されている「事業引継ぎ支援センター」は、公的な機関であり、営利目的ではないので、一方的に事業売却を進められてしまうなどという強引なことはないものと考えることができます。(中小企業庁の外郭団体である「中小企業基盤整備機構」、略称「中小機構」による全国の「事業引継ぎ支援センター」一覧はこちら

 

そういう意味では、「公的機関なら信頼できるのではないか?」と問われれば、「騙す意図も動機もない」という点では「信頼できる」ということは言えるでしょう。

 

ただし、注意しておくべきポイントは大きく2つあります。

 

1つは、公的機関だからといって、なんでも相談に応じてくれるわけではない、ということです。

公的機関は、別に意地悪で相談事項を限定しているのではありません。それどころか、非常に真面目で、公正中立な使命感を持った方が多くおられます。

 

「あなたの意に反して、ものごとがどんどん勝手に進められてしまう」ということは恐らくないとは思います。(当研究所が全国の公的機関の職員全員の職務品質を保証できるわけはありませんから、このように「恐らく」「思います」という断定できない表現となることはご理解ください)

 

2020年10月25日追記:近年では、公的な「引継ぎ支援センター」の中にも、民間のM&A仲介業者と「提携」するところが増加しています。あなたの「同意」のもとに「紹介」と称して、貴社の情報が仲介業者に連絡される可能性があります。公的機関の職員はおっとりしていても、高率の歩合給で稼働する営利企業に紹介されるかもしれません。「同意書」などに署名する際には、この点も慎重に検討されることをお奨めします。

 

しかし、そのことと、「あなたの期待する相談ができるか?」というのは別問題です。

 

もし、「期待に応えてくれるのか?」という意味で「信頼できるのか?」と問われているのだとすれば、それについては「必ずしもそうとは限らない」という返答になります。

 

上にご紹介した中小機構のポータルサイトをご覧頂いてもわかるとおり、中小企業庁のいうところの「事業引継ぎ支援」とは、実態としては「あなたの事業の引き受け手を探すお手伝いをします」ということです。

 

つまり、「売上を伸ばす営業手法」や「財務内容を良くする方法」や「後継者をその気にさせるノウハウ」や「多すぎる借金を減らす方法」など、それぞれの事業者のもっとも知りたいことを教えてくれる建前には最初からなっていません。

 

それは何故かといえば、国にも県にも商工会議所にも「そんなノウハウも人材もない」からです。

(そんなノウハウがあったら、国や地方自治体の財政状況が悪くなるはずはなく、公債発行残高が膨張していなかったはずです。)

 

もう1つの、より大きな問題があります。

 

それは、公的機関を装った民間業者が多く発生しているという点です。

ためしに、インターネットで「事業承継」と検索してみてください。

 

広告も含めて非常に多くのサイトが表示されますが、その中には、役所かその外郭団体の公的機関であるかと思わせるような、紛らわしい名称を名乗るサイトがいくつも出て来ます。

 

都道府県庁の公式HP(全部の政策などが掲載されている大元のサイト)からリンクをたどって入って行くなど、慎重に見極めることが必要です。